仕事をやり遂げるうえで絶対に欠かせないものを一つあげよと言われたら、私は「憤」の一字をあげたいと思います。
憤がないことには、頑張りようがないのです。
「何するものぞ」という負けじ魂が出てこないと、本物にはなれないのです。
そういう意味で、人間的成長の原動力の一つは「憤」だと私は思っています。
ところが、昨今の若い人たちは、胸中に憤が湧き起こる前に諦めてしまいます。
発心、決心はするのですが、憤がないために簡単に初心を忘れてしまいます。
それはまさに咽元(のどもと)過ぎれば熱さを忘れるが如くです。
その繰り返しをしているように思います。
これでは仕事ができるようにはなりません。
やはり胸に憤の一字をしっかり抱いて、一度やると決めたことは苦しくても頑張り抜く姿勢が大切なのです。
これは
志がどれほどしっかりしているか
と言い換えてもいいと思います。
仕事において結果を出すために、志は必要不可欠なものです。
しかし、志ほど壊れやすいものはないというのも事実です。
まさにそのことを、司馬遼太郎の『峠』という小説の中で、越後長岡藩の英傑(えいけつ)河合継之助が言っています。
「志ほど世にとけやすく、壊れやすく、砕けやすいものはない」
と。
「発心・決心・持続心」という言葉があります。
何かをなそうとするとき、発心、決心までは誰でもいきます。
しかし、それを何年、何十年と倦まず弛まず持続することは並大抵のことではありません。
相続心がないから志が頓挫してしまうのです。
継続するとは、かくも難しいものです。
それでもなお、志が必要なのです。
志がなければ、事業の成功も人間としての完成も期待できません。
「志ある者、事遂に成る」
と言うように、高い志こそが人間を成長発展させていく原動力になるからです。
「何のために働くのか」(北尾吉孝著)より