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Channel: 芸術家く〜まん843
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「大いなる霊界の計画」小島養厳

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フォックス家の人々が聞いた不思議な叩音は、一般にラップと呼ばれている。霊媒の体から抽出されるエクトプラズムという半物質によって起きる現象だ。エクトプラズムの形態はさまざまに変化し、ガスのように希薄な状態であることもあれば、石のように硬質なものになることもある。フォックス姉妹は騒霊騒動から逃げるためハイズヴィルを離れたが、彼女たちがどこへ行ってもラップは生じるのであった。そこで、これは人為的になされたものではないかとも疑われた。だがこれは誤解である。霊媒としての資質に恵まれた姉妹のエクトプラズムによって生じた現象であったので、ラップはどこまでもつきまとい、彼女たちはそれから逃れることができなかったのだ。  ラップという現象は、かなり古くから世界各地で知られており、その最初の記録は9世紀にまでさかのぼることができる。しかし、霊と交信することを目的としてラップが採用されたことは、ハイズヴィル事件以前は皆無であった。フォックス家の人々は、まさに霊と画期的な交信法を試みたといってよいであろう。だが、ここで勘違いしてはならないのは、ハイズヴィル事件の主人公は、フォックス家、すなわち人間側ではなかったという点である。それは、あくまでも霊界側であったのだ。 事件後、イサック・ポストという人物が叩音による通信にアルファベットを用いたらどうかという提案をした。アルファベットを発音していくなかで、ある文字まで来ると霊が叩音を発し、同様のことを繰り返していくうちに文章がつづられていくという方法である。この方法をとることにより、霊的交信は大きな飛躍を遂げ、密度の濃い通信を得ることができるようになったのだが、そこには、明確な霊界の目論みを見てとることができる。フォックス姉妹がこの方法で最初に受け取った霊界からのメッセージは、次のようなものであった。  「友よ、あなたがたは、この真実を世界に対して明らかにせねばなりません。新時代の夜明けなのです。勤めを果たしなさい。そうすれば神があなたがたを守護され、高き霊が見守ってくださるでしょう。」  科学主義が世界を覆い尽くそうとしていた時、それに歯止めをかけるために、霊界がハイズヴィル事件を計画したのだ。後にもたらされた多くの霊界からの通信も、そのことを明言している。この事件が起こった年は、マルクスが共産主義宣言をした年であったが、唯物主義を黙視することはできないという霊界側の思いも響いてくるようだ。そこには、物質的な科学が進化をしていく過程のなかでバランスをとって、人類の霊的意識もそれに応じて進化させていこうとする霊界の意図もあったのであろう。  さて、ハイズヴィル事件がそれまでの騒霊騒動とは決定的に違っていた点として、当代一流の科学者が調査に乗り出したことと、事件の背後に大きな霊界の計画があったということを述べてきたが、もう一つ付け加えておきたいことがある。それは、フォックス姉妹の名声に影響されて、多くの女性たちが次々と霊媒として名乗りをあげはじめたということだ。事件以降、霊媒が職業として公的に認知されるようになったのである。米国人のネティー・コルバーン(後のメイナード夫人)やヘイデン夫人がその例である。コルバーンはエブラハム・リンカーンに奴隷解放を説いたことで、また、ヘイデン夫人は社会主義思想家、ロバート・オーエンを熱烈なスピリチュアリストに変えたことで知られている。これらの霊媒なくしてはスピリチュアリズムの進展はなかったのである。  霊媒たちがどのように活躍したのか。次回はそういった点にスポットライトを当てて見ていくことにしよう。

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