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Channel: 芸術家く〜まん843
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2014年5月公開映画「ヴィオレッタ」あらすじ

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カンヌで議論を呼んだ衝撃の実話
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1977年実の母親が撮影した自分の娘のヌードという触れ込みでフランスのみならずヨーロッパや日本でも大きな議論を呼んだ写真集「エヴァ(初版タイトルは鏡の神殿)」が発売された。この写真集はまたたくまに世界中で話題となりアメリカでは「史上最年少でPLAYBOYに載った少女」ということでセンセーションを巻き起こした。日本でも80年代にブームが巻き起こり写真展が開催され雑誌「BRUTUS」の表紙を飾るなど少女エヴァと母親の写真家イリナは有名な存在であった。
写真集の発売から34年がたち被写体だった娘のエヴァ自身が脚本を書き監督したのが本作。『ヴィオレッタ』(原題「My Little Princess」は2011年カンヌ映画祭・批評家週間50周年記念映画として上映された。
劇中では本名のエヴァからヴィオレッタという役名に変更。ヴィオレッタはスミレの花を意味するが娼婦を主役にした有名なオペラ「椿姫」のヒロインの名前ヴィオレッタをイメージしていることは想像に難くない。かつての自分の実体験が反映された自伝的な映画であるが娘を愛する一方で写真家としての名声も捨てられなくて苦しむ母親像も描いている。カンヌではヴァラエティ誌をはじめ各雑誌や新聞で注目され大きな話題となった。
新たなフレンチロリータ誕生!
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少女ヴィオレッタ役のキャスティングは難航した。数か月のオーディションを経てもイメージに合う少女はフランス国内では見つからなかった。誰よりもこの役のことを知り尽くしているエヴァ・イオネスコ監督だからこそのこだわりであるがルーマニアから応募してきたアナマリアを見た瞬間その美貌にほれ込み即決したという。10歳でこの難役をつとめることになったアナマリア・ヴァルトロメイは本作が映画デビュー。清楚で美しい少女がヌードモデルとなり男に媚びる妖しさを覚える。厚化粧をしナイトクラブで大人に囲まれ次第に汚れていく様は『タクシー・ドライバー』で少女の娼婦役を演じたジョディ・フォスターを彷彿とさせる強烈な存在感を残す。母親への愛情を持ちながらもヌードモデルをさせられることへの強烈な反発やがて母親から逃れたいともがく姿を熱演。ボンベイ国際映画祭主演女優賞受賞。
写真集のモデルだったエヴァ・イオネスコが監督・脚本
エヴァは母親のイリナ・イオネスコが撮影した写真集のモデルのほかに女優としても60本以上の出演作がある。中でも1979年に日本で公開された『思春の森』(1977)は12歳だったエヴァが胸や局部を出してセックスシーンを演じたことでスキャンダルフィルムとなり日本でも修正されて上映された。
監督しては短編を1本しているものの長編としては本作がデビューとなる。本作は原案を書いてから10年以上の準備期間を経て2010年に撮影。時代背景やゴシック風の衣装、実体験のエピソードを忠実に再現するなど脚本も手掛けた。ボンベイ映画祭で作品賞・監督賞を受賞。2012年のセザール賞では新人監督賞にノミネートされた。
70年代のフランスを見事に再現したキャスト・スタッフ
カンヌ国際映画祭・主演女優賞『ピアニスト』(2001)ヴェネチア国際映画祭・主演女優賞『主婦マリーがしたこと』(1988)などでフランスを代表する女優イザベル・ユペールが写真家イリナ・イオネスコに扮しモンスターマザーを怪演。ボンベイ国際映画祭ではアナマリアと2人同時に主演女優賞を受賞。画家に扮するのはレオス・カラックス作品の常連ドニ・ラヴァン。70年代フランスのアート界の華麗な雰囲気を漂わせる衣装を担当したのはジバンシィやシャネルなどのスタイリングを担当するパリの有名スタイリストキャサリン・ババ。コスチュームデザイナーとしてはこれが唯一の作品。彼女の代名詞ともいえるヴィンテージ・ファーは劇中にふんだんに登場。セザール賞で最優秀衣装デザイン賞にノミネートされた。撮影は『8人の女たち』(2002)のジャンヌ・ラポワリー。60年代のフレンチ・ポップで知られるミュージシャン・作曲家のベルトラン・ブルガラが音楽を担当している。

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12歳の少女ヴィオレッタ(アナマリア・ヴァルトロメイ)は優しい曾祖母に育てられてきた。かつて画家で今は写真家を目指している母アンナ(イザベル・ユペール)は留守がちで娘たちとは別に部屋を借りて寝起きしている。複雑な家庭事情の中で暮らしている3世代の女性たちはお金がなく日々の暮らしにも困る有様であった。ある日ヴィオレッタはアンナに自室に招き入れられる。厚いカーテンに閉ざされた光の入らない部屋はアールデコ風の家具や鏡、妖しい香り漂うオブジェで埋め尽くされていた。娘に「ママは写真を撮っているの」と切り出したアンナはヴィオレッタの三つ編みの髪をほどき白いレース・ドレスに着替えさせ写真を撮り始める。母と遊んでいるような感覚が楽しく母にこたえ言われるままにポーズを取るヴィオレッタ。

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学校でのヴィオレッタは授業中もポーズの練習に余念がない。そんな娘をアンナが放課後に迎えにくる。保護者会にも来てほしいと訴える娘に対し母は他の取り柄のない凡人たちと自分たちは違う、行く必要はないと言い放つ。そして画家エルンスト(ドニ・ラヴァン)のアトリエにヴィオレッタを連れて行く。そもそもアンナにニコンのカメラを与え彼女が写真を撮るきっかけを作ったのはこのエルンストだった。アンナの写真を見て彼は「絵より写真の方が才能がある。続けることだ」とアドバイスする。そんな母とエルンストを退屈そうに眺めていたヴィオレッタはエルンストと母が親密そうにする姿に不快感を募らせ彼の絵をメチャクチャにしてしまう。帰り道「彼はママの恋人なの?」と問う娘にせかせかと歩きながら「厳密にはそうじゃない。ママは肉体恐怖症で人間の人体が怖いの」と告白するアンナ。
ヴィオレッタの身を案じる曾祖母の祈りとは裏腹に母娘のフォトセッションはエスカレートしていきヴィオレッタの衣装はレースのドレスからシースルーやスパンコールのレオタード、黒ストッキング、ガーターベルトへ。赤いルージュに濃いアイメイクを施し葬式用の花輪や十字架、髑髏や壊れた人形などを手にヴィオレッタは妖婉なポーズでしなを作る。さらにアンナはヴィオレッタのドレスをはぎ脚を開かせたり過激なポーズを要求するようになっていく。やがてアンナの個展が開かれる。新進アーティストの仲間入りを果たしたアンナの評判はヨーロッパを駆け巡り写真も高値で売れ始めた。ある時母娘はシド・ヴィシャスとのフォトセッションのオファーを受けてロンドンへ飛ぶ。シドにお姫様のように扱かわれ気をよくしたヴィオレッタだったが翌日撮影が始まると服を脱いでシドとのキスを求める母の指示を拒んで撮影から逃げ出してしまう。この日を境にヴィオレッタはアンナに利用されていることへの不満を爆発させるようになる。

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やがてヴィオレッタを守り続けてきた曾祖母が遂にこの世を去る。アンナが売った写真が男性誌のカヴァーを飾り学校でも「ヌードモデル」と囃されていじめられるヴィオレッタは孤独を募らせてゆく。一方アンナの写真は話題を呼ぶと同時に倫理上の議論を巻き起し児童虐待のかどで裁判所から保護者失格の烙印を押しされるアンナ。ヴィオレッタの親権を失いそうになったアンナは弁護士に救済を求めるがヴィオレッタの母に対する嫌悪は募るばかりだった。

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○イリナ・イオネスコ写真集『 エヴァ』とは?
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女流写真家のイリナ・イオネスコは、実の娘エヴァが4歳から13歳の間に撮影をした写真集(「鏡の神殿(Temple aux Mirios)を1977年に発表した。バロック的審美性で貫かれた官能的な写真集はバロックエロスの寵児としてもてはやされ高い評価を受けた。しかし作品が広まっていくにつれて愛娘をロリータ・セックスのアイドルに仕立て撮影を行ったイリナの作品は「洗練された悪趣味」とも評され道徳と倫理をめぐってフランスのみならずアメリカ、ヨーロッパ、日本でも大きな話題となった。しかしシュルレアリスムとバロックの混沌とした写真は世界中で今なお高い評価を得ている。そんな世界的な評価の高さも手伝い2004年には初めて1冊のモノグラフにまとめあげた写真集『エヴァ』が日米で同時出版されたが北米市場における流通トラブルにより米国版元が突然事業閉鎖。作品集は世界の市場から消え去り写真集そしてエヴァのシリーズは再び幻の存在となる。その後はプレミアとなって取引されていた。しかしその様な背景から増刷を望む多くの日本のファンの為に2011年には日本語限定復刻版が発売。

キャスト
アンナ  イザベル・ユペール
ヴィオレッタ アナマリア・ヴァルトロメイ
マミー  ジョルゲッタ・レアウ
エルンスト  ドニ・ラヴァン
ジャン  パスカル・ボンガール
アップダイク ジェトロ・キャーヴ
アントワーヌ・デュピュイ  ルイ=ド・ドゥ・ランクザン

スタッフ
監督 エヴァ・イオネスコ
脚本
エヴァ・イオネスコ
マルク・ショロデンコ
フィリップ・ル・ゲ
製作 フランツ・クサヴァー・フランツ
撮影 ジャンヌ・ラポワリー
美術 フランソワ=ルノー・ラバルト
音楽 ベルトラン・ブルガラ
編集 ロランス・ブリオー
衣裳デザイン カトリーヌ・バーバ

原題 My Little Princess
製作年2011年
制作国フランス
配給 アンプラグド
上映時間 105分

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