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Channel: 芸術家く〜まん843
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心にフタを

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尾崎一雄という小説家の『虫のいろいろ』という作品の中に「蚤(のみ)の曲芸」という話が出てきます。


ノミは小さな虫ですが、自分の背丈に比べるとケタ外れに長い距離を飛ぶことができます。

だからノミに曲芸を仕込むのは至難の業です。

そこで曲芸師はどうするか。

最初はノミを小さな丸いガラス玉の中に入れるのです。
ノミはガラス玉の中で得意の足で跳ね回ります。

しかし、周囲は固いガラスの壁ですから、いくら頑張ってもそれ以上高くは飛べません。

そのうちノミは跳ねることに絶望し、やがてガラス玉の中だけが自分の世界だと勘違いして飛ぶのをやめてしまいます。

そうなったところで、曲芸師はノミをガラス玉から取り出します。
しかし、自由な世界を与えられても、ノミはもう飛ぼうとしません。

飛ぶことを忘れてしまっているのです。
曲芸師は飛ばなくなったノミに芸を仕込んで、ようやく舞台に出すのです。

この話を読んだとき、私は同じことが戦後の日本に、そして今の子供たちに起きているのではないかと思いました。

たとえば、今は「引きこもり」や「うつ」など、生きる力を失っている子供が増えています。

少年非行にしても、昔はエネルギーがありあまってそれを外に向けて発散するような形のものが多かったのですが、最近は「本当にこの子が事件を起こしたの?」と思うような子供が事件を起こしています。

私はこうした子供たちを
「心のコップが下を向いている」
といっています。

内側にこもって、自分の小さな世界から外に出ることができないのです。

なぜそういうことになるのでしょうか。

原因はいろいろ考えられますが、親子関係でいうならば、親が子供に否定的な言葉を投げかけ続けることによって、こういう子が増えています。
これを「やっつけメッセージ」といいます。

「お兄ちゃんはいい子なのに、あなたは何をしているの。早く、早く、早く」

という否定的な言葉のメッセージです。

毎日こうした言葉を投げかけられた子供は心にフタをしてしまいます。

その結果、本来備わっているはずの「発達力」や「生きる力」を引き出せないまま成長してしまうことになります。

これを日本の国で考えるならば、フタをしたのは占領軍の「ウォー・ギルド・インフォメーション・プログラム」でした。

「日本人に戦争犯罪の意識を刷り込む情報宣伝計画」のことです。

このウォー・ギルド・インフォメーション・プログラムを日本人に対して行う源流となったのは、ルース・ベネディクトの著した『菊と刀』に代表される「日本人の国民性」論、日本文化論でした。

それがそのまま占領軍の目になったのです。


「日本が二度と立ち上がれないようにアメリカが占領期に行ったこと」(橋史朗著)より

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